市原国際奨学財団

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討論会を開催しました [vol.7]

市原国際奨学財団が大切にしているのは、奨学金による経済的な支援だけではありません。
国籍や文化、専門分野の異なる学生が出会い、互いの経験や価値観から学び合う機会も提供しています。

その取り組みの一つとして、2026年7月12日(日)、豊橋技術科学大学 総合教育院 准教授の岩内章太郎先生をファシリテーターに迎え、哲学対話による討論会を開催しました。
今回体験したのは、『本質観取』という対話の手法です。
参加者が自分自身の経験を持ち寄り、互いの違いを認めながら丁寧に話し合うことで、物事に共通する「本質」や皆が納得できる答えを探していきます。
対話では、次の3つのルールを大切にしました。

1.相手の意見を否定しない
2.自分の言葉と経験で話す
3.沈黙を恐れず、考える時間を大切にする

奨学生一人ひとりが安心して自分の考えを語り、多様な価値観に触れながら視野を広げていく。
経済的な支援にとどまらず、学生同士のつながりと成長を支えることも、この奨学制度の大きな特徴です。

Aグループ

テーマ
なつかしさの本質
国籍
中国・スリランカ・ベトナム・日本

昔訪れた場所や学生時代の風景、思い出の品、母国の食べ物、家族の写真など、それぞれがなつかしさを感じた経験を共有しました。
また、匂いや音をきっかけに記憶がよみがえることや、故郷を思うなつかしさには切なさや寂しさも含まれることが分かりました。
対話では「過去とのつながり」や「五感による記憶」などの共通点を探しながら、それだけでは説明できない経験にも目を向けました。
互いの違いを否定せず、相づちや質問を交えて丁寧に聴くことで、国籍や文化を越えて理解を深めることができました。
最後は、多様な経験に共通する要素を言葉にまとめ、全員が納得できる「なつかしさの本質」へと近づきました。
意見の違いを活かしながら本質を探る、対話の面白さを実感した時間となりました。

Bグループ

テーマ
不安の本質
国籍
中国・フィリピン・ベトナム・日本

受験や試験、アルバイト先での出来事、道に迷った経験など、それぞれが不安を感じた場面を共有しました。
留学生からは、日本語での会話や新しい環境への適応に不安を感じた経験も語られました。
対話を重ねる中で、不安は「知らない状況」「先の見えない未来」「現状と理想との隔たり」に直面したときに生まれやすいという共通点が見えてきました。
一方、不安の感じ方や向き合い方は人によって異なり、多様な視点に触れることで自分の感情を客観的に捉え直すことができました。
「なぜ」「つまり」と問いかけながら互いの経験を掘り下げ、異なる背景の中にある共通点を探すことで、「不安の本質」への理解を深めました。
他者の考えを受け入れ、自分の視野を広げる機会となりました。

Cグループ

テーマ
自由の本質
国籍
ネパール・中国・ミャンマー・日本

スポーツや生活を自分で選ぶこと、一人暮らし、自己表現など、それぞれが自由を感じた経験を共有しました。
また、渡航のしやすさや家族との暮らし方、周囲の目や暗黙のルールなど、国や文化によって自由の感じ方が異なることも分かりました。
対話を通して、自由とは単に選択肢が多いことや、何でも好きにできることではなく、一定の枠組みの中で自分の意思に基づいて選び、その結果に責任を持つことだと考えました。
また、実際に望みがかなうことだけでなく、「挑戦しようと思えば挑戦できる」という可能性や安心感も、自由を支える大切な要素であると気づきました。
最終的に、自由の本質を「外部から過度に制限されることなく、一定の枠組みの中で自分の行動を自分の意思で選択できる状態」と捉えました。
異なる文化や経験を持ち寄ることで、自由に対する理解を深めることができました。

Dグループ

テーマ
悔しさの本質
国籍
ミャンマー・韓国・中国・日本

試験や進学、友人との比較、周囲からの評価など、それぞれが悔しさを感じた経験を共有しました。
対話を通して、悔しさは努力が実らなかったときだけでなく、不可抗力によって望む未来が閉ざされたときや、現状と理想との隔たりを感じたときにも生まれることが分かりました。
また、悔しさには自責や後悔、苛立ちなどの「心の痛み」だけでなく、「次こそは成功したい」と人を行動や成長へ導く「心のバネ」という側面があることに気づきました。
最終的に、悔しさの本質を「自分や状況に対して抱く願いが叶わなかったときに生まれる『心の痛み』と、次こそは成功したいという『心のバネ』が入り混じった感情」と捉えました。
異なる経験を尊重しながら共通点を探すことで、悔しさへの理解を深めることができました。

Eグループ

テーマ
不安の本質
国籍
ミャンマー・中国・韓国・日本

教員採用試験や就職活動、進路、人間関係など、それぞれが不安を感じた経験を共有しました。
「なぜ」「つまり」「例えば」と問いかけ合い、安心して話せる雰囲気の中で不安の背景を掘り下げました。
対話を重ねる中で、異なる経験にも「まだ分からない未来」や「自分の力ではコントロールできないこと」への心配という共通点が見えてきました。
そこで、不安の本質を「自分ではコントロールできない未来の問題を、今この瞬間に解決しようとする本能」と捉えました。
また、不安は必ずしも悪いものではなく、自分の将来や目標を大切に考えているからこそ生まれ、行動を見直すきっかけにもなると気づきました。
互いに問いかけながら考えることで、不安を新たな角度から捉え直すことができました。

Fグループ

テーマ
不安の本質
国籍
ミャンマー・韓国・中国・日本

将来や進路、離れて暮らす家族への心配など、それぞれが不安を感じた経験を共有しました。
対話を通して、不安は未来が見通せず自分の選択に確信が持てないときや、自分の力だけでは状況を変えられないと感じたときに生まれることが分かりました。
不安の感じ方は人によって異なりますが、将来が不確かで、さまざまな可能性を想像することへの不安は多くのメンバーに共通していました。
また、留学の経験から自分にとっての当たり前が、ほかの人にとっても同じとは限らないことに気づきました。
互いの経験や価値観を尊重し、違いの中にある共通点を探すことで「不安の本質」への理解を深めました。
対話を通じて相手の見ている世界を知ることの大切さを実感しました。

Gグループ

テーマ
怒りの本質
国籍
ウズベキスタン・タイ・日本

恋愛やアルバイト、友人関係などで怒りを感じた経験を共有しました。
特に約束の時間に対する考え方の違いから、同じ出来事でも文化や価値観によって、怒りの有無や強さが異なることに気づきました。
また、「怒り」と「イライラ」の違いについて話し合い、感情を外に表すか、心の中にとどめるかという捉え方や、言語によって表現のニュアンスが異なることも分かりました。
対話を重ね、怒りの本質を「自分と相手の価値観や生き方の違いによって不満や不快感が生まれ、その感情を相手に向けて発散すること」と捉えました。
互いの経験や意見を尊重しながら共通点を探すことで、怒りという感情への理解を深めることができました。

討論会まとめ

全体の感想

日本人

大学や学年、国籍などが異なる参加者との哲学対話を通して、互いの考えに耳を傾け、共に考えることの大切さを学びました。
対話とは相手を説得したり論破したりすることではなく、それぞれの経験や言葉の背景を確かめながら、新しい考えを共につくる営みです。
安心して話せる場をつくり、「なぜ」「つまり」「例えば」と問いかけることで、自分とは異なる価値観への理解を深めることができました。
ゲームや「本質観取」などの体験を通して、楽しみながら実践的に対話の方法を学びました。互いの違いを尊重し、理解を重ねる対話が、人と人をつなぎ、共生社会を築く基盤になると実感しました。

留学生

哲学対話やゲームを通して、相手と共に考えることの大切さを学びました。
対話とは自分の意見を押し通すことではなく、相手の話を丁寧に聴き、「なんで」「つまり」「例えば」と問いかけながら、その背景や価値観を理解することだと気づきました。また、発言しないことも認められる安全な雰囲気が、日本語に不安のある留学生の積極的な参加につながりました。
国籍や文化、経験の異なるメンバーとの交流を通して、対話力とは話す力だけでなく、相手を尊重して聴く力、安心できる場をつくる力、そして異なる意見を受け止めながら共に考える力であると実感しました。

今回学んだ対話力を今後どのように活かしたいか

日本人

大学の授業や研究、就職活動、医療・教育現場、日常生活など、幅広い場面で活かしたいという意見が寄せられました。
相手の意見を否定したり、自分の価値観を押し付けたりせず、丁寧に話を聴き、「なぜ」「つまり」「例えば」と問いかけながら理解を深める姿勢を大切にしたいと考えています。また、沈黙を尊重し分かりやすい言葉を使うことで、誰もが安心して発言できる環境をつくることの重要性も学びました。
意見が異なるときも勝ち負けや多数決で終わらせず、互いの共通点を探り、できる限り全員が納得できる結論を目指します。
相手と自分では見えている世界が異なることを意識し、日常のあらゆる場面で傾聴と問いかけを実践していきたいと思います。

留学生

授業やゼミ、研究、就職活動、将来の職場など、さまざまな場面で活かしたいという声が寄せられました。
相手の話を最後まで聴き、「なぜ」「つまり」「例えば」と問いかけながら、その背景や価値観を理解するとともに、自分の考えも分かりやすく伝えることを大切にしたいと考えています。
また、間違いや沈黙を受け入れ、誰もが安心して話せる環境をつくることの重要性も学びました。
異なる文化や専門性、価値観を尊重しながら共通理解を築き、多様な人々と協力できる、信頼される社会人へ成長していきたいという思いが共有されました。

今後の討論会への要望・取り上げてほしいテーマ

日本人

今回の討論会では、「本質観取」を通して、国籍や年齢を超えて経験や考えを共有できたことが高く評価され、今後も参加したいという声が多く寄せられました。
今後のテーマとしては、各国の文化や習慣、コミュニケーションのほか、「幸せ」「信頼」「努力」「勇気」「一人の時間」「学生生活における成功」などが挙げられました。
また、対話と世界平和の関係について考えたいという意見もありました。
運営面では、討論時間を分けてメンバーを交代することや、ポスター制作と全体共有の時間を増やすことが提案されました。
議論の過程を記録し他グループの考え方も共有することで、さらに多くの視点に触れられる討論会が期待されています。

留学生

今回の討論会では、安心して意見を伝え異なる価値観に触れられたことが高く評価され、今後も日本人学生と留学生が経験を語り合う機会を増やしてほしいという声が寄せられました。
今後のテーマとしては、「異文化理解」「友情」「平等」「幸福」「信頼」「夢」「働く意味」のほか、「自分らしい生き方」「人生の転機と選択」などが挙げられました。
国や文化による考え方の違いを認め合い、相互理解を深めたいという期待も示されました。
運営面では、少人数での対話やゲームを継続し、自由に意見交換する時間と全体共有の時間を増やすことが提案されました。
映画やニュースなども活用しながら、誰もが安心して経験を語り、互いに理解を深められる討論会が期待されています。

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